今日は恋に関する話。

昔、CDなんかを制作して宣伝して販売する会社にいた。

ある日、某会社のパーティでのアトラクションの依頼で、某歌手の子を仕事に連れて行った事があった。確かデビューして5年目位の、アイドルから少し大人へ転換期を迎える年頃、というカンジの女の子だった。

会場についてすぐ、会場全体を把握する為や雰囲気の確認で、天井裏に行って会場を見下ろした。そこはすでに、お酒と雑談の声で5回位渦巻いていた。スポットライトは舞台を照らしているが、照明さんは誰もいない。音響も期待できない。歌を聞いて頂くには、程遠い状況だった。

女の子はその後まもなく支度を終え、舞台に近い扉の外で、出番を待っていた。口数は終始少なかった。手のひらにお粉をたたくお手伝いをして笑顔で送り出したら、ちょっと可愛く笑ってみせてくれた。

出番。
イントロが流れて女の子が飛び出して歌い出す。
それもとびっきりの笑顔。

そう、あれは、1〜2曲歌った頃だったか、その時突然彼女は会場の人の渦の中に降りて行ってしまった。なんと客席で歌うつもりらしい。客電がついたままのおじさんばかりの会場で、彼女の姿だって見失いそうだ。私は、さっき上がった天井裏の照明を思い出し、駆け足で階段を登り、スポットライトを両手で持って、おじさんの中の彼女を照らし出した。

たくさんの人の中にいるたったひとりを、遠い場所から見つめる。ライトの筋が私と女の子を繋いでいる。健気に歌う女の子が愛おしく感じた。ほんの少し、恋に落ちた気分だった。

。。。
今日、ある人と、もう一度仕事を選べるなら、何の仕事につきたいかと言う話になって、自分でも驚くほど唐突に、「照明さん」と答えてしまった(笑)

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索